神経因性疼痛モデルのひとつである、坐骨経結紮(CCI)ラットを対象にして、局所麻酔薬リドカインと免疫抑制薬シクロスポリンの痛覚異常への効果を調べた。効果判断は、von Frey hairを用いて、機械的アロディニアを両側の後肢足底で計測した。統計学的処理はKruskal-Wallis検定、ならびに一元配置分散分析を用い、P<0.05を有意とした。 局所麻酔薬リドカインは、埋め込み型持続注入ポンプを用いて25μg/minを神経結紮後2日目から一週間皮下に投与した。CCIラット(n=5)には、結紮後いずれも機械的アロディニアが発症した。リドカイン投与後もアロディニアの改善は見られなかった。投与量を25μg/min以上にすると、ラットは通常の毛繕いや探索行動を行う回数が減り、リドカインによる行動の異常が見られた。CCIモデル以外では、リドカインの持続投与によるアロディニアの改善効果の報告があるが、われわれの実験では効果を認めなかった。リドカインは神経障害後に投与しても効果がないか、あるいは、投与経路、投与時期の違いにより、効果が変わる。 免疫抑制剤のシクロスポリンは、神経結紮後2日目から20日間投与した。投与量は10、1、0.1、0.01mg/kgとし、腹腔内に投与した。投与する溶液量は1μl/gとなるように調整した。シクロスポリン投与群では、投与後3日目から、機械的アロディニアの軽減が観察され、その効果は用量依存性であった。しかし、20日間の投与でも、機械的アロディニアは完全には消失しなかった。シクロスポリンは、CCIモデルにおける機械的アロディニアの進行を抑制する効果がある。神経障害後に投与しても、効果が期待できる。
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