ラットの坐骨神経結紮モデル(CCIモデル)において、免疫抑制薬シクロスポリンまたは抗炎症薬ベタメタゾンを投与し、神経因性疼痛への治療効果を調べた。 雄性Sprague-Dawleyラット(230〜300g)の左坐骨神経を4-0 chromicで4回結紮した。坐骨神経結紮後2日目までに手術側の機械的アロディニア、機械的刺激と温熱刺激に対する痛覚閾値の低下が発症したラットを6群(n=5)に分けた。結紮後2日目より、生理食塩液、シクロスポリン0.01、0.1、1、10mg/kgまたはリン酸ベタメタゾン1mg/kgを、それぞれ1日1回、20日間腹腔内に投与した。投与する溶液量は1μl/gとした。アロディニアは、薬物投与に関与しない観察者が、von Frey hairを用いて両側の後肢足底で計測した。機械刺激に対する痛覚閾値の低下はRandal-Sellito圧痛覚測定装置を用いて、温熱刺激はホットプレートを用い、両側の後肢測定で計測した。結紮後70日間追跡し、日数と逃避反応閾値、あるいは逃避潜時で囲まれるarea under curveを求めて、各群の治療効果を比べた。比較には一元配置分散分析とScheffeの検定を用い、P<0.05を有意とした。 シクロスポリン投与群では、用量依存性に機械的アロディニア、機械刺激に対する痛覚閾値の低下が改善した。シクロスポリン10mg/kgを投与したラットでは、投与中に一過性のアロディニアの増悪がみられたが、投与終了後から改善した。温熱刺激に対する逃避閾値の低下は、シクロスポリン1mg/kg投与群で改善した。しかし、神経因性疼痛の症状である温熱刺激に対する痛覚鈍磨とも考えられる。それぞれ1mg/kgのシクロスポリンまたはベタメタゾンを比較すると、シクロスポリンの治療効果の方が強かった。しかし、シクロスポリンでも、アロディニアは完全に消失しなかった。 シクロスポリンは、神経障害後に投与してもCCIモデルによる神経因性疼痛を抑制する効果がある。抗炎症作用だけでは治療効果は弱い。
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