研究概要 |
脳虚血-再潅流による脳障害の発生機序として活性酸素、nitric oxide(NO)の発生増加とglutamateの細胞外遊離を考える場合には、superoxideとNOは互いにscavengerとなることや、脳内に豊富に存在する抗酸化物質であるascorbic acidによる活性酸素消去作用を考える必要がある。従って 1)AAの細胞外遊離をmicrodialysis biosensorを利用して測定する方法の検討、その後glutamateとAAの細胞外遊離を同時に測定し、2)AAとglutamateの相互作用を検討、3)free radicalとしてnitric oxide(NO)の関与の検討、4)虚血時間による影響、5)虚血後再潅流時の脳温低下(36℃より32℃)による影響、をin vivoで検討した。 【方法】Wistar系ラットを対象とし、Microdialysis biosensorを左右の線条体又は海馬に挿入、両側頚動脈clampと脱血で前脳虚血とし、再潅流後60分迄の変化を脳血流量(CBF)、大腿動脈圧(MAP)と共に連続測定した。 【結果】1)再灌流後はAA以外のcompoundsによる影響がないため、一般のbiosensorのoxidation signalによりAAが検出できる。2)Glutamateが再灌流により著減した後にAAが著増する。3)NO synthaseのinhibitor(L-NAME)の前処置でglutamateのre-uptakeが抑制される。4)虚血時間の延長により再灌流後のAA遊離が抑制され、glutamateのre-uptakeが障害される。5)再灌流時の脳温低下により常温と比較しCBFは再灌流15分以後高値、MAPが高値、虚血中著増したGluは再灌流後に低値で、再潅流後著増したAAは再灌流5-40分後高値となる。 以上より1)glutamateとAAのheteroexchange、2)glutamateのre-uptakeにradical(NO)の関与、3)AAによるNMDA受容体抑制作用、4)低温による脳保護作用としてAAによる再潅流後のGlu遊離の抑制、MAPの上昇とCBFの維持,が示唆された。
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