研究概要 |
正常ラット大動脈(コントロール)を深麻酔下に摘出し,幅約3mmのリング標本を作製した.一部の血管では内皮細胞を除去した.これらの血管をα_1刺激であるフェニレフリンで,最大収縮の60〜80%となるように収縮させた.次いでムスカリン受容体アゴニストであるアセチルコリン,β_1受容体アゴニストであるドブタミン,およびβ_2受容体アゴニストであるサルブタモールによる拡張反応を検討した.また,フェニレフリンの代わりにプロスタグランジンF_2αで収縮させた後にも,同様の拡張反応を検討した.その結果,フェニレフリンで収縮させた血管において,アセチルコリンは濃度依存性に内皮依存性の拡張反応を引き起こした.ドブタミンも内皮存在下で濃度依存性の拡張反応を起こしたが,高濃度では内皮の存否にかかわらず血管を拡張させた.サルブタモールの血管拡張作用は内皮非依存性であった.プロスタグランジンF_2αで収縮させた血管において,アセチルコリンは濃度依存性の内皮依存性拡張反応を示した.これに対してドブタミンは,プロスタグランジンF_2αで収縮させた血管を拡張さなかった.したがって以下の実験では,血管収縮はフェニレフリンのみを用いることとした. 腹膜炎ラットでも上記と同様の反応を検討した.腹膜炎は12時間絶食としたラットをイソフルラン麻酔下に開腹し,虫垂を取り出して結紮するとともに19ゲージ針で2カ所に穿孔を開けた後に閉腹した.腹膜炎作成後24時間を経過したラットに対し,深麻酔下に腹部大動脈から採血し血中サイトカイン濃度測定用とした後,大動脈を摘出した.大動脈は幅約3mmのリング標本とし,フェニレフリンで最大収縮の60〜80%となるように収縮させた.その後に内皮依存性血管拡張薬であるアセチルコリン,ドブタミンを投与した.その結果,腹膜炎ラットでは,内皮依存性血管拡張反応が有意に抑制されていることが明らかとなった. 腹膜炎ラットにおいて,腹膜炎作成後の時間経過で血管反応性に違いが出るか否かについても検討したが,現時点では時間経過による反応性の変化を明らかにすることはできなかった.今後の検討課題としたい.
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