研究概要 |
平成11年度に得られた科学研究費は、備品として遺伝子研究に必要な電気泳動装置やオートクレーブ、消耗品として主に発現P450やその抗体、遺伝子研究用試薬類の購入に充当した。今年度の研究は当初の計画通り、ラットの肝臓及び末梢血液中のリンパ球のP450、P450mRNAの定量及びこれらの組織学的観察を主に行ってきた。特にreverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)に関しては、より定量性を向上させるためにcompetitive RT-PCRの技術を導入し、competitor、primerを決定することにより、CYPmRNAの正確な定量が可能になった。competitive PT-PCRを用いることにより、ラットの肝臓のP4503A4活性がバルビタールやリファンピシン等の薬物により誘導を受けて増加する際に、リンパ球中のP4503A4mRNAも増加していることが明らかになった(Nakamoto T,et al.Pharmacogenetics,in press)。また別のP450分子種である、P4502E1活性についても、ラットの肝臓とリンパ球の間に相関が認められることが明らかになった(Hase I,et al.Anesthesiology,in press)。また、静注されたミダゾラムの薬物動態は肝臓のCYP3A4を反映していると考えられ、これが様々な薬物によって競合阻害を受けることも明らかになった(Oda Y,et al.Br J Anaesth,1999: 82: 900-903,Hamaoka N,et al. Clin Pharmacol Ther 1999: 66; 110-117)。以上の実験により、P450、P450mRNAの定量の手法が確立し、今後臓器の組織学的観察と統合することにより、敗血症モデルにおける多臓器不全機構の解明が可能であると考えられる。
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