本研究は、摘出血管平滑筋におけるIL-1β惹起iNOS誘導が低温により影響されるか否かを明らかにすることを目的とした。 内皮除去を行なったラット摘出大動脈の輪状標本を37℃Krebs Ringer液中においてIL-1β(20ng/ml)を5時間曝露することにより、KCL、およびフェニレフリンによる収縮力は著明に低下した。同様の標本を27℃のKrebs Ringer液中においてIL-1β(20ng/ml)を5時間曝露することによるKCL、およびフェニレフリン収縮は37℃に比して有意に増強された。さらに、37℃Krebs Ringer液中においてIL-1β(20ng/ml)を5時間曝露することにより増加した組織内cGMP濃度は27℃の低温処置により有意に抑制された。 ラット摘出大動脈標本を37℃Krebs Ringer液中においてIL-1β(20ng/ml)を5時間曝露することによりiNOS mRNAおよびiNOS蛋白発現は増強した。同様の標本を27℃のKrebs Ringer液中においてIL-1β(20ng/ml)を5時間曝露することによりiNOS mRNAおよびiNOS蛋白発現著明に減弱した。 以上の結果より、ラット摘出大動脈におけるIL-1β惹起性iNOS誘導は低温により減弱することが明らかとなった。このことより、虚血性脳細胞障害機構にiNOS誘導が関与し、低体温療法による脳保護作用はこのiNOS誘導の抑制が寄与していることが示唆された。さらに、今後、特異的iNOS阻害剤を脳保護に適用される可能性もある。
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