研究概要 |
ATP情報伝達系に与える吸入麻酔薬の影響を調べ、その作用機序との関連性を明らかにするため、インビトロとインビボの2つに分け下記のような実験を行なった。 1.インビトロ.ATPレセプター結合に対する吸入麻酔薬の影響を調べため、雄SDラット摘出脳より作製したシナプス膜分画を用い、P2Xレセプター選択的アゴニストであるトリチウムラベルしたαβメチレンATPをイソフルラン、セボフルラン、ならびにP2Xレセプターアンタゴニストのスラミン、PPADSと供にインキュベイションした。スラミンはαβメチレンATPの膜分画に対する結合を抑制したが、吸入麻酔薬のイソフルラン、セボフルランはなんら影響を及ぼさなかった。このことは以前我々が示した吸入麻酔薬のATP内向き電流抑制作用は、吸入麻酔薬がレセプターそのもの機能を低下させたことを示唆してる。 2.インビボ.麻酔作用に対するATP情報伝達系とその他の機構の相互作用を調べるため、脳室内にP2XレセプターアンタゴニストのPPADS、ならびにNMDAレセプターアンタゴニストのD-AP5を投与し最小肺胞濃度(MAC)を測定した。PPADS,D-AP5はそれぞれMACを低下させ、更に同時投与を行なった場合、相加的な相互作用を示した。一方それぞれの、濃度を上昇させた場合でも、MACを0にすることはできなかった。以上の結果より、ATP,NMDAレセプターはそれぞれ麻酔作用と関連しているが、別々の経路によりその作用を表わしていることが考えられ、加えてその他の多くの情報伝達系の関与も示唆された。 今後、入手したP2XレセプターcDNAを用い、吸入麻酔薬の遺伝子レベルの作用点を明らかにするつもりである。
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