研究概要 |
ATP情報伝達系に与える吸入麻酔薬の影響を調べ、その作用機序との関連性を明らかにするため、入手したP2XレセプターcDNAを用い、レセプターを強制発現させることにより実験を行なった。 われわれはこれまでに、1)P2アンタゴニストの脳室内投与により吸入麻酔薬力価である最小肺胞濃度の低下、2)P2アンタゴニストとNMDAアンタゴニストの同時投与による肺胞最小濃度に対する相加作用、3)ラット脳スライス標本において青班核細胞で、ATP刺激電流のセボフルランによる抑制、4)ラット脳膜分画において、吸入麻酔薬はATP結合に影響を与えない。以上のことを明かとしてきたが、このことにより吸入麻酔薬はP2Xレセプターの機能そのものを抑制し、麻酔作用を生じ、そしてこの作用が、吸入麻酔薬の作用機序の一部であることを示してきた。しかしながら、どの種類のP2Xレセプターが吸入麻酔薬の作用と結びついているかは定かではない。したがって脳内に発現していると考えられるP2XをそのcDNAより強制発現させ、吸入麻酔薬の作用を確認することを目的とした。 P2X1〜P2X7までのcDNAのうち、P2X3,P2X4,P2X6を大腸菌内で増殖し、HEK293細胞にリポフェクタミンにてトランスフェクトした。P2X3,P2X4,P2X4+6発現細胞においてATPによる内向き電流を確認し、またP2X3発現細胞ではさらにカルシウムイメージング装置により、ATPnによる細胞内カルシウムの増加を認めた。今後これらの細胞に対し吸入麻酔薬の作用を調べ、その作用機序をレセプター内レベルで調べる予定である。
|