研究概要 |
われわれはこれまでに、吸入麻酔薬の作用機序の一部がP2Xレセプター機能抑制に関連していることを示してきた。今回どのP2Xレセプターサブタイプが吸入麻酔薬の作用機序と関連しているのかを調べるために、P2XレセプターcDNAを用い、これを強制発現させ、パッチクランプ法によりその機能に与える影響を調べた。 P2X2,P2X4,P2X4+6を大腸菌内で増殖し、HEK293細胞にリポフェクタミンにてトランスフェクトした。P2X2,P2X4,P2X4+6発現細胞においてATPによる内向き電流を確認したが、P2X4+6の電流は非常に不安定なものであり、麻酔薬を投与するには至らなかった。これに対しP2X2,P2X4では比較的に安定したATP電流を得ることができた。パッチクランプを行なう細胞が、集団塊を作っている場合、セボフルレンにより濃度依存的にATP電流は減少した。一方、細胞が塊をなしていない単独のものを用いた場合には、セボフルレンの抑制効果は認められなかった。 今回とこれまでの結果をまとめて考察を行なうと、次の2つの可能性が示唆される。 (1)P2X2,P2X4のいずれの抑制も吸入麻酔薬の作用機序とは関連していない。 (2)吸入麻酔薬のP2Xレセプター抑制作用はギャップジャンクション抑制作用を介しているようである。 今後これらの検討を行なう予定である。
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