研究概要 |
周術期及び救急集中治療管理下の患者において、正常時、周術期、さらに肝不全、多臓器不全に陥った際の肝類洞の一酸化炭素を測定し、それと、従来行ってきた肝静脈血酸素飽和度、GST-α、ケトン体比との関係を調べた。14名の肝手術患者で肝静脈血酸素飽和度を持続測定し、同時にGST-αを測定した。肝静脈血GST-αと動脈血GST-αの関係はY=0.69X+8.12,R^2=0.23で高い相関が得られた。肝静脈血酸素飽和度とGST-αの関係はY=0.19X^2-27.3X+975、R^2=0.23で肝静脈血酸素飽和度が低くなるとGST-αが高くなる相関を示した。ここからGST-αは肝静脈血酸素飽和度を反映し、肝周術期管理に有効である可能性が高いことがわかった。次に肝手術患者で一酸化炭素を肝静脈から測定した。症例は7例であった。肝静脈でのO_2HbとCOHbの関係はY=0.05X^2-0.0041X+1.30、R^2=0.014で有意の関係はなかった。ここから肝静脈血酸素飽和度と一酸化炭素の関係には相関がえられず、一酸化炭素測定が今後臨床に応用できるかどうかは更に検討を要することがわかった。救急肝疾患患者6例での一酸化炭素を肝静脈で測定した結果では肝静脈でのO_2HbとCOHbの関係はY=0.03X^2-0.07X+4、R^2=0.007で有意の関係はなかった。さらに肝手術中に血液中または肝表面においたプローブから一酸化窒素を測定する試みを行ったが値が安定せず動物実験で確かめることにした。別に手術室に搬送されたSIRS患者で肝静脈血酸素飽和度、GST-α、一酸化炭素を肝静脈血で測定した。肝静脈血酸素飽和度とGST-αは肝静脈血酸素飽和度が30%以下の時点ではR^2=0.01であった。一酸化炭素の肝臓類洞循環への作用はばらつきが大きく、これは患者がSIRSのためか、基礎疾患の違いによるものかは不明であった。このため動物敗血症モデルの確立が不可欠と考え、基礎実験でもコンピューターを駆使したデータ収集システムを構築中である。
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