方法)雄ウィスターラットを用いて、ペントバルビタール麻酔下にガイドカニューラを側坐核に植え込んだ。24時間後にマイクロダイアライシス用カニューラを挿入し、以下の5群に分けて測定を開始した。ドパミン測定は、透析液を高速クロマトグラフィーで分離した後、電気化学検出器にて行った。 1群:生理的食塩水を腹腔内投与2群:ケタミン50mg/kg腹腔内投与3群:ケタミン100mg/kg腹腔内投与4群:ペントバルビタール25mg/kg 腹腔内投与5群:ペントバルビタール50mg/kg腹腔内投与 透析液は20分毎に採取し、上記薬物投与前3回のサンプル液の平均値をコントロールとした。 さらに、ケタミンによるドパミン放出に対するペントバルビタールの効果を調べるため、生食もしくはペントバルビタール25mg/kg腹腔内に投与10分後、ケタミン50mg/kg腹腔内投与し、同様の測定を行った。 結果と考察)生食ではドパミンの上昇は見られなかった。ケタミンは濃度依存性に側坐核ドパミン放出を増加させた。その最大の増加はコントロールに対して50mg/kgでは133%、100mg/kgは227%であった。逆に、ペントバルビタールは温度依存性にドパミン放出を減少させた。ケタミンによるドパミン放出増加は、ペントバルビタールにより完全に抑制された。この結果より、ケタミンによる精神異常誘発作用や耽溺性には、側坐核ドパミン放出の増加が関与していることが証明された。逆に、同様に精神作用や耽溺性のあるバルビツレートは、中脳辺縁系ドパミン系の関与は無く他の機序によるものと考えられた。さらに、ケタミンのいわゆるemergence effectsをバルビツレートが抑制する作用機序として、側坐核ドパミン放出を抑制することが示唆された。
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