ラット腎臓では、糖輸送体GLUT4は尿細管のヘンレのループの太い部分に発現している。免疫組織化学的な検索により、GLUT4はここでも他の糖輸送体とは異なって細胞膜ではなく細胞内に局在していた。この細胞内に局在するGLUT4の動態を明らかにするために、GLUT4と緑の蛍光を発するグリーンフルオレッセントプロテイン(GFP)との融合蛋白質をコードする遺伝子を作製し、それを培養細胞系で発現させた。このGLUT4-GFPの動態を生きた細胞で観察するために、倒立顕微鏡に設置するための温度、湿度、二酸化炭素等の条件をコントロールできるチャンバーを作製した。また熱膨張の影響による焦点面の移動などの不安定さを排して安定して観察できるようにするために、簡単なレンズヒーターなども作製した。これを用いてGLUT4-GFPを3T3-L1細胞で発現させ、その動態をタイムラプス顕微鏡法により記録した。その結果、GLUT4-GFPは核近傍のゴルジ野(ゴルジ装置とトランスゴルジネットワーク)にたくさん存在するのが判明した。さらにこの部位では、小胞や管状の構造が盛んに分岐、融合がみられた。また細胞内に分散している小型の小胞には、動きの殆ど無いものと、非常に早く線状に動くもの、その中間で往復運動をするものの三種がみられた。なお、GLUT7、8、9については、部分ペプチドを用いてウサギを免疫したが、また満足のゆく抗体は得られていない。
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