研究概要 |
腎臓には多彩な輸送体、チャネル、ポンプなどがあり、その輸送機能を担っているが、個々の分子種の局在や役割には不明の点が多い。本研究では、ラット腎臓を用いて、糖などの輸送にかんよする細胞膜糖輸送体の分布と動態について検討を加えた。フルクトース輸送体GLUT5は、RT-PCR、蛍光抗体法組織化学、免疫電顕法などにより、髄質外帯の近位尿細管S3セグメントの頂部刷子縁細胞膜に局在するのが判明した。一方インスリン依存性に細胞内から細胞膜へと移行する糖輸送体GLUT4は、Henleループ細胞の細胞内に分布していた。3T3-L1培養細胞での各種オルガネラマーカーを用いた多重標識では、核近傍のゴルジ野(ゴルジ装置とトランスゴルジネットワーク)からエンドソームにかけて局在するのが判明した。さらにグリーンフルオレッセントプロテイン(GFP)標識したGLUT4を用いて生きている細胞での局在と動態ををタイムラプス顕微鏡法により記録した。その結果、GLUT4-GFPは核近傍のゴルジ野では、GLUT4陽性の小胞や管状の構造が盛んに分岐、融合するのがみられた。また細胞内に分散している小型のGLUT4小胞には、動きの殆ど無いものと、非常に早く線状に動くもの、その中間で往復運動をするものの三種がみられた。また有機カチオン輸送体(OCT)のなかで,rOCT1とrOCT2のラット腎臓での局在について多重蛍光抗体法により検討した.rOCT1は腎皮質の近位曲尿細管に,rOCT2は腎髄質外帯外層の近位直尿細管に分布するのが判明した.rOCT1,rOCT2ともにそれぞれの部位の近位尿細管細胞の基底側壁部に局在していた.これはrOCT1,rOCT2が有機カチオンの近位尿細管への取り込みに関与しているのを示唆している.
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