研究概要 |
膀胱癌切除標本および尿中剥離細胞におけるFluorescence in situ hybridization(FISH)法の有用性を検討し、自然尿を用いたFISH法が膀胱癌の検出を非侵襲的に行えるか、再発を予測しうるかを検討した。膀胱癌25例から得られた膀胱癌切除標本においてFISH法を施行し、FISHによる膀胱癌検出頻度は、第7染色体39%、第8染色体18%、第9染色体58%、第17染色体45%、全体で64%であった。手術前の膀胱癌症例44例と泌尿器科的悪性腫瘍を有さない症例20例において自然尿中剥離細胞を検体として第9,17染色体のセントロメアプローブを用いてFISH法を行った。また、尿細胞診とBTAテストを行い、FISHの結果と比較検討した。FISHによる膀胱癌検出頻度は85%であり、BTAテスト64%,尿細胞診32%よりも有意に高かった(それぞれp=0.026,p<0.0001)。FISH、BTAテスト、尿細胞診のspecificityは、それぞれ95%,70%,100%であった。膀胱癌の再発予測マーカーとしてのFISH法の有用性を検討するために、膀胱癌症例33例より得た尿検体においてFISH法を行った。腫瘍切除後のFISHの結果は、33例中21例(63.6%)でFISH陽性であった。観察期間中に、膀胱癌の再発は13例において確認され(39.4%)、全例FISH陽性であった。FISH陰性の12例は再発しなかった。第17染色体変異を有する症例は、第17染色体変異を有さない症例よりも有意に膀胱癌の再発率が高かった(p<0.0001)。 以上より、自然尿中剥離細胞を用いたFISH法は、非侵襲的に膀胱癌を検出し、また膀胱癌の再発を予測しうることが示唆された。
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