研究概要 |
前立腺癌細胞株(LNCaP,PC-3,DU145)を用いたステロイド代謝について、各ステロイドを基質にした薄層クロマトグラフィーによる分析結果、副腎ステロイドが、とりわけDHEAがステロイドプールとして大きく関与していることを平成11年度に明らかにした。また、アンドロゲン依存性前立腺癌株においてアンドロステンジオンからDHEAにいたる経路が優位に代謝しており、非依存性癌ではその逆の代謝活性を認めた。これらの現象の一部はステロイド代謝系におけるグルクロン酸抱合及び硫酸抱合がホルモン依存性に関与している可能性を示唆した。その代謝酵素のひとつであるglucuronosyltransferaseの発現の相違について明らかにし、その関与の可能性を検証した。これらの現象を分子生物学的に検討した結果、前立腺癌細胞株LNCaPにおいてはグルクロン酸抱合を触媒するglucuronosyltransferaseが強く発現しており、PC3,DU145において少ないことを見出した。平成12年度は、LNCaPに対してglucuronosyltransferaseの選択的なanti-sense oligomaやアンチセンスDNAを作製導入し、その増殖活性が抑制されるかどうか検討した。anti-sense oligoma導入し前立腺癌細胞の増額やステロイド代謝について検討したが、有意差をみとめなかったが、アンチセンスDNA導入によって、増殖活性の増加を抑制することを証明した。したがって、in vitro系であるが前立腺癌におけるアンドロゲン依存性は、アンドロゲン除去機構の低下がみられた結果であると結論できたが、その機構について今後の課題となった。
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