研究概要 |
1.膀胱弛緩機構と膀胱β-アドレナリン受容体(B-AR):(1)正常ヒト膀胱平滑筋は主にβ3-サブタイプを介して弛緩すること,(2)神経因性膀胱患者より摘出した膀胱においても,β-AR作働性弛緩は正常膀胱と同様に主にβ3-ARを介すること,(3)ウレタン麻酔下ラットにおいて,選択的β3-AR作働薬CL316,243は心血管系や排尿効率に悪影響を与えることなく,排尿間隔を延長し,膀胱容量を増大する効果があること,(4)イタチの膀胱平滑筋のβ-AR作働性弛緩はヒト膀胱と同様に主にβ3-ARを介すること,および麻酔下のイタチにおいて,選択的β3-AR作働薬CL316,243の投与は心血管系に影響を与えることなく,膀胱弛緩を誘発しうること,(5)選択的β3-AR作働薬は,覚醒下ラットにおいて,心血管系に影響するここなく,脳梗塞に伴う過活動膀胱やプロスタグランディンE2の膀胱内投与によって誘発される過活動膀胱を有意に抑制しうることを明らかにした.以上の知見から,選択的β3-AR作働薬は過活動膀胱や低コンプライアンス膀胱に基づく膀胱蓄尿障害の治療薬として期待しうることが示唆された. 2.過活動膀胱とドーパミン受容体:覚醒下ラットでは,ドーパミンD1受容体は排尿反射の生理的な抑制に関与し,他方,ドーパミンD2受容体は排尿反射の促進に関与することを明らかにした.パーキンソン病における過活動膀胱の発生機序として,ドーパミンD1受容体の活性障害が考えられ,D2受容体刺激薬の投与は過活動膀胱を増悪させる危険があることが示唆された. 3.脊髄損傷に伴う膀胱平滑筋内NGF濃度の変化と膀胱求心性神経細胞内のNGF受容体と各種知覚神経ペプチドの局在の変化に関する検討:脊髄損傷ラットを用いて現在検討中で今後の課題としたい.
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