1.シュウ酸結石の作成:ヒト腎結石のモデルとしてのシュウ酸結石の形成を試みた。培養細胞MDCK細胞の培地にシュウ酸を各種濃度のにして加え、産生された結石の分析を行ったが、シュウ酸結石の産生は確認されなかった。さらにシュウ酸の前駆物質であるアスコルビン酸、エチレングリコール、でも同様にシュウ酸結石の産生には至らなかった。なお、現在、シュウ酸の微小結晶を細胞表面と基底側に加え、その産生状態を観察中である。さらに、株化されたMDCK細胞をさらにクローニングし、その結石産生の多い株と結石産生の無いものについて、の遺伝子情報の差について検討を行っているところである。しかしこれまでの研究ではこれらシュウ酸の前駆物質を加えた培養でもやはりシュウ酸結石の形成は作成する事はできなかった。またMDCK細胞株のクローニングを行ったが結石の形成は時間の差は見られるものの、全ての株でリン酸結石の形成がみられた。これらの遺伝子情報も大きな差としては見られなかった。 2.ラット腎細胞および正常ヒト腎細胞とMDCK細胞の比較検討:ラット腎細胞およびヒト腎細胞の遠位尿細管と思われる部分の初代培養を行い、MDCKと同様に長期に培養を行ったが、これらの細胞にMDCK細胞のような微小結石の産生はみられなかった。またこれらの細胞の細胞内外のカルシウムイオンの動態を観察したが、MDCK細胞にに比較し、カルシウムイオンの細胞頂部から基底部への移動は少ない傾向がみられ、結石を形成するMDCK細胞に特有のカルシウムイオン動態があることが確認された。 3.結石形成の因子の解明と結石抑制因子の検討:結石凝集因子として知られているosteoponntin(OPN)に対してその凝集抑制物質と考えられているurinary trypsin inhibtor(UTI)が分離されている。これをもとにUTIが、MDCK培養細胞が形成するリン酸カルシウム結石を抑制するかどうかを培養細胞で検討中である。
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