研究概要 |
1.前立腺組織におけるビタミンA関連レセプターの蛋白発現について:retinoic acid receptor(RAR)-α、β、γ、retinoid X receptor(RXR)-α、β、γに対するポリクロナール抗体を用いて、緩衝ホルマリン固定標本前立腺肥大症15例、前立腺がん15例について免疫組織化学的解析を行った。RAR-α、γは全肥大症、がん症例(100%)に、RXR-α、γは肥大症全例に、がん症例の80%に発現を認めた。RXR-βは両症例ともに13%、RAR-βは前立腺肥大症の100%、がん症例の13%と有意な発現低下を認めた。2.ビタミンA関連レセプターのRNA発現について:RAR-α,β,γのジゴキシゲニンラベルのプローブを作成、解析を試みた。RAR-α、γのシグナルは肥大症、がん症例の全例に確認されたが、RAR-βに関しては、シグナルを確認できなかった。そのため、選択的に組織を分離し、RNAを抽出しRT-PCRにてその発現を確認した。がん症例の20%に対し、肥大症の80%にRNAの発現が認められた。3.RARβ2遺伝子の発現機構の解析:前立腺がんで、発現低下が目立つRARβ2遺伝子の制御機構について解析した。(1)がん10症例のがん部非がん部よりDNAを抽出し、PCR-SSCP解析を行ったが、異常バンドは検出されず、エクソン領域の遺伝子異常は無いと考えられた。(2)bisulfite PCR法を用いてRAR-β2promoter領域のメチル化を調べた。肥大症では認めなかったが、がん24症例の83%に異常なメチル化を認めた。同領域のメチル化がRAR-β2の発現制御に関与している可能性が示された。前立腺発がん過程で、ビタミンA関連レセプターのRAR-β、特にβ2が中心的な役割を果たし、腫瘍マーカーあるいは遺伝子治療の標的に出来る可能性が示された。
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