研究概要 |
近年の遺伝子レベルでの解析に伴い腎細胞癌はその組織形態と遺伝子変化が密接に関連していることがよく証明されてきた。すなわち非乳頭状の大部分をしめる淡明細胞癌では3番染色体の短腕の欠失が高頻度にみられ、またVHL遺伝子の変異が高率に認められる(Gnara et al.1994、Shuin et al.1994)。これらは組織学的悪性度や臨床ステージに関係なく淡明細胞癌に高頻度に認められること、比較的悪性度の低い淡明細胞癌の好発するVon Hippel Lindau病の患者でのGerm line mutationが認められることより腎癌発生に関わる比較的初期遺伝子変化と推測される(Gnara et al.,1994)。われわれは腎細胞癌に頻度の高いparaneoplastic syndromeを呈する原因遺伝子を検索すべく以下の項目について検討中である。すなわち手術時摘出され当研究室で-80度に保存されているヒト腎細胞癌のうち組織学的に淡明細胞癌を含む腫瘍に限定してretrospectiveにみて急速な転帰をとった淡明細胞癌(急速進行症例)と体重減少や急性炎症反応を伴なわず少なくとも5年間にわたって再発のない淡明細胞癌とのグループ各15例を選別し腫瘍、正常周囲腎組織よりDNA抽出を完了した。病理学的解析ではこれらの急速進行症例グループの腎癌症例では肉腫型腎癌の部分はほとんど含まれておらずまた逆に肉腫型腎癌の多くでは発熱・体重減少を伴った症例はむしろ少なくこれらは個々に独立した遺伝子変化が関与していると推測された。DNA解析にては少なくとも3p,6p,6q,8p,9p,9q,11p,14q,17pにおけるマイクロサテライトマーカーを用いてPCR法によりLOHの解析を行っているが現在のところ急速進行症例特異的な欠失部位は判明していない。平成12年度はマーカー領域を広げるとともにTaqmanPCRによるrealtime-PCRによる検索の迅速化を試みるとともにSAGE法による発現面からの解析をする予定である。
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