研究概要 |
腎細胞癌は成人に発生する腎悪性腫瘍としてはもっとも頻度の高いものであるが、現在のところ手術療法が唯一の確立された治療法であり難治性癌の一つである。殊に体重減少や急性炎症反応(血沈、CRP陽性)を伴ったいわゆるparaneoplastic inflammatory syndromeを呈する症例では急速な転帰をとることが多く予後不良症例が多いとされる。しかし腎細胞癌で何故高頻度にparaneoplastic inflammatory syndromeをおこし、さらに同タイプの腎細胞癌が何故予後不良で急速進行型のものが多いかについてはまったく解明されていないのが現状であった。腫瘍DNAでのLOHの解析では8p,9q,14qのLOHがhigh grade, high stage群において優位に高頻度にみられるとの報告があるが、いずれもparaneoplastic inflammatory syndrome発症のメカニズム解明という観点では行われていない。われわれは発熱、CRPやESRの上昇を伴った淡明細胞型腎細胞癌20例を対象とし、コントロール群として発熱、CRPやESRの上昇を伴わない淡明型細胞型腎細胞癌(手術時転移を有する進行腎癌症例18例、非進行腎癌症例25例)を選び広範なマイクロサテライト解析(1q,3p,4q,6p,6q,7q,8p,9p,9q,11p,14q,17p)を行ったところparaneoplastic inflammatory syndromeを伴った腎癌症例では3qLOHと14qLOHが必要条件(18/20)となっているが、発熱、CRPやESRの上昇を伴わない腎癌では転移を伴った進行症例であっても14qLOHを認めないこと(1/18)が明らかになった。このことは第14番染色体長腕欠失が腎細胞癌の臨床症状としての不明熱発生や特異的悪性進展に関与している可能性を示唆するものである。現在第14番染色体長腕に存在する標的遺伝子の同定に向けて解析を継続中である。
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