平成12年度は、11年度に引き続き解析可能症例数を増やし、ヒト前立腺癌組織におけるcaveolinの発現と抗アンドロゲン療法に対する反応性との関係をレトロスペクティブに解析し、caveolinがヒトの前立腺癌におけるアンドロゲン依存性に関与する程度をさらに詳細に明らかにすることである。その結果、背景因子ならびに臨床経過が明らかで当教室に保存中の前立腺癌症例64例の臨床検体を対象として検討を行った。 1 caveolin-1の発現を免疫染色法を用いて検出した。:ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用い、ABC法を用いて免疫染色を行った。前立腺癌細胞においてカベオリンは細胞質が顆粒状もしくは瀰漫性のパターンを示して染色された。 2 病理組織学的異型度との関連:病理組織学的異型度と統計学的有意差は認めないものの、異型度の上昇に伴いカベオリンの発現が増加する傾向を認めた。 3 臨床病期(stage)との関連:同様に統計学的有意差は認めないものの、病期の上昇に伴いカベオリンの発現が増加する傾向を認めた。転移巣での発現をさらに解析する必要性が認められた為、リンパ節有転移症例の組織を収集しさらに検討することとした。 4 予後との相関:ベオリンの発現が予後予測因子となりうるか否かの検討を行うため、患者の予後調査を11年度に引き続き行った。解析の結果、カベオリンの発現とその予後には明らかな相関関係は認められなかった。 5 抗アンドロゲン療法に対する反応性との関連:抗アンドロゲン療法を行った症例について治療法後の再燃の有無とカベオリン発現の相関を検討したが明らかな相関は認められなかった。 6 検体の収集:昨年度に引き続き、研究を円滑に遂行するために手術にて得られる新鮮組織の採取ならびに凍結保存を行った。本組織を用いた分子生物学的な解析を行った。
|