1.腰仙髄アドレナリン受容体の排尿における役割を検討するため、正常ラットと胸髄を損傷した慢性脊損ラットの腰仙髄領域の脊髄髄腔内にアドレナリンα1A受容体遮断薬のタムスロシンとα1D受容体遮断薬のナフトピジルを投与し、等容量性膀胱内圧浸旋に及ぼす効果を検討した。その結果、脊髄損傷の有無に無関係に、両薬剤とも投与後の膀胱収縮の発現を遅らせ、投与量を増やすとナフトピジル投与で膀胱収縮圧が低下した。α1D受容体のmRNAの半定量では、脊損後も腰仙髄内のα1D受容体mRNA量に変化はなかった。したがって、排尿反射の求心路と遠心路の両方にアドレナリンα1D受容体が関与していることが判明し、血中のカテコラミンも脊髄に作用して排尿反射促進に働くことが考えられた。 2.副腎髄質を仙髄に自家移植した慢性脊損ネコとシャム手術脊損ネコで経時的に膀胱内圧測定と外尿道括約筋筋電図測定を行ったところ、自家移植ネコで膀胱収縮時に外尿道括約筋が収縮する膀胱尿道協調不全状態が改善した。移植した仙髄中にはチロシン水酸化酵素に対する抗体陽性反応細胞が確認された。したがって、腰仙髄に投射するカテコラミンは尿道弛緩の点からも排尿促進に働くことが判明した。 3.脳梗塞ラットの等容量性膀胱内圧測定と中枢神経系各所のグルタミン酸とグリシン濃度を経時的に測定した。正常ラットをコントロールとすると、脳梗塞後にラットは頻尿となったが、2週後にはコントロールレベルに回復した。大脳では脳梗塞1日後から8週までグルタミン酸が低下し、脳幹と頚胸髄ではグリシンが低下した。腰仙髄では脳梗塞1日後から1週後までグリシンが低下したが、その後グリシンは徐々に増加しコントロールレベルに回復した。したがって、脳梗塞後の頻尿とその後の回復は腰仙髄中のグリシン濃度に依存する可能性が考えられた。
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