アンドロゲン依存性の前立腺癌およびアンドロゲン・レセプター(AR)の突然変異によるアンドロゲン非依存性癌に対し、ARE(androgen responsive element)のおとり型核酸(デコイ)によってARの転写因子活性を競合阻害する治療の可能性を検討した。AREデコイとしてAREの共通配列を有する23merの2本鎖オリゴヌクレオチドを合成しLNCaPから抽出した核蛋白に対してゲル・シフト法を行い、特異的DNA-蛋白結合反応を認めた。次に、アンドロゲン存在化(DHT 10^<-9>M)で培養したLNCaPにAREデコイをリポフェクションで導入し、24時間後にアポトーシスの誘導がDNA断片化により確認された。 Mitogen-activated protein kinases(MAPK)は細胞増殖や分化に重要な役割を担っており、血管平滑筋細包ではα1アドレナリン刺激がErk1/2を介して細胞増殖に働くことが知られている。前立腺上皮と非上皮細胞においてノルエピネフリン(NE)がMAPK活性化とDNA合成に及ぼす影響についてin vitroで検討した。間質細胞および平滑筋細胞では、NE添加によりリン酸化Erk1/2は有意に増加したが、上皮細胞では変化を認めなかった。JNKとp38は活性化されなかった。また、NEにより非上皮細胞ではDNA合成が増加した。これらの結果より、NE刺激がErk1/2の活性化を介して前立腺の非上皮細胞の増殖を促す可能性が考えられる。
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