研究概要 |
近年、臓器移植後の拒絶反応に対してvascular myosin heavy chain isoformの関与が報告されている。我々はなかでもそのisoformの一つであるSMembの関連の重要性を考え、ラット腎移植モデルを作成し急性拒絶反応における糸球体でのSMembの発現を検討した。《方法》allograftではWistarラットをドナーとし、Lewisラットをレシピエントとして、腎移植を施行した。一方、isograftではLewisラットを用い以下のグループを作成した。A群:未処置群(n=5)、B群:isograft群(n=20)、C群:allograft群(n=20)。それぞれ移植後1、3、5、7日目に屠殺した。《結果》A群すなわち未処置腎におけるSMemb免疫組織染色の結果、糸球体上皮細胞にはわずかにSMembの発現を認めたが,メサンジウム細胞には認めなかった。集合管にはSMembの発現を認めた。間質,尿細管,血管及びその他にはSMembの発現は認なかった。 B群、isograftモデルでは移植後7日目でも急性拒絶反応の所見は認められなかった。SMembの免疫組織染色の結果、腎移植後1日目より糸球体上皮細胞に、未処置群と同程度の弱いSMembの発現を認めた。 C群、allograft群のHE染色では移植後5日目より糸球体では糸球体係蹄内等に細胞が多数認められ毛細血管腔は狭細化を起こしており移植糸球体炎が、また間質への細胞浸潤や間質浮腫も認められ明らかな急性拒絶反応所見が確認された。 免疫組織染色では腎移植後1日目は糸球体上皮細胞及びメサンジウム細胞に、isograftモデルと同程度のSMembの弱い発現を認めた。術後3日目では病理組織学的な拒絶反応の所見はまだみられていなかったが、SMembの発現はすでにメサンジウム細胞を中心に明らかに増強した。5日目にはさらに著しく増強しており,7日目においてもその強い発現が持続した。《考察》ラットallograftモデルにおいて急性拒絶反応時にメサンギウム細胞が形質変換を起こすことをSMembの発現より確認した。SMemb発現はラットallograftモデルでは病理組織学的に拒絶反応所見をほとんど認めない早期より有意に発現することを免疫組織学的検討で証明した。
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