(1)BCGを貧食した膀胱癌細胞のサイトカイン分泌能についての検索を行った。5×10^4個の人膀胱移行上皮癌培養細胞株(T-24細胞)に5×10^6CFUのBCG(Tokyo172-1株)をrIFN-γ、rTNF-αとともに加えて37℃、5%CO_2下で3時間培養しBGG ingestion assayを行った。続いて、余分なBCGを含んだ古い培養液を捨て、細胞を洗浄した後に新しい培養液を加えて37℃、5%CO_2下で、さらに24時間培養し培養液中のサイトカインをSandwitch ELISA法にて測定した。IL-6(9055±150pg/ml)、IFN-γ(150±63pg/ml)、TNF-α(1306±350pg/ml)が測定可能であったが、これらのサイトカイン分泌はBCGのinternalizationの過程を阻害する事によって阻害され、マクロファージ様作用を持った腫瘍細胞からの分泌である事が示唆された。 (2)膀胱癌細胞のマクロファージ作用の一つと考えられるBCG貧食後のfateについての検索を行った。75cm^2組織培養用のフラスコでmonolayerの40〜50%なったT-24細胞に7.5×10^5CFUのBCGを加えて37℃、5%CO_2下で3時間培養しBCG ingestion assayを行った。フラスコより余分なBCGを十分に洗い出した後に、トリプシン・EDTA溶液でフラスコから腫瘍細胞を遊離させると同時に細胞外に接着しているだけのBCGを細胞より剥がした。続いて、Ficoll-Hypaqueにて比重分離法用いて腫瘍細胞と細胞より離されたBCGのみとを分離し、細胞だけを採集した。一つのフラスコ分の採集された腫瘍細胞のみに0.25%SDS液を加えて細胞壁を破壊し、細胞内に取り込まれたBCGを細胞外に放出させた。次に5%BSA液でSDS液を中和させた後に、Middlebrook7H9寒天倍地で放出されたBCGを培養しコロニー数を算出した。他のフラスコ分の細胞は、抗生物質を除いた培養液を加えて新しいフラスコに戻して培養を続け、24時間ごとに前述のごとく細胞内のBCGを放出させから寒天倍地上でコロニー数を数えた。その結果、0、24、36、72時間の培養では癌細胞およびBCGともに増殖を示していたが、96時間ではBCGの増殖は抑制されていた。これは、BCGを細胞内に取り込んだ膀胱癌細胞の電子顕微鏡写真でのBCGのdegradationの所見を支持する結果と思われ、膀胱癌細胞が抗原提示能を持つ可能性も示唆された。
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