研究概要 |
妊娠糖尿病(GDM)におけるインスリン分泌動態の特徴および抵抗性の有無を明らかにし,臨床所見ならびに産後耐糖能異常の発症との関連を調べた.GDMと診断された妊婦17例を対象とし,同意を得て無作為に75gOGTT・IRI測定を施行し,耐糖能正常と診断された妊婦102例を対照(C群)とした.1)両群において,IRI,Insulin/Glucose(I/G),Insulinogenic Index(II=△IRI30'/△BS30'),AUC Insulin,AUC Glucoseなどについて比較した.2)C群のAUC Insulinを基準に,GDM群を3群(hyper-insulinemia>十1.5SD,normo-insulinemia,hypo-insulinemia<-1.5SD)に分類して,臨床所見(母体因子6,新生児因子4項目)を比較した.3)産後1ヵ月以降にGDM群(n=16)の耐糖能を調べ,妊娠時と産後のインスリン分泌動態を比較した.結果として,1)GDM群はC群に比べ,I/G(3O'60')およびIIが低値であった(p<0.05).2)GDM群はhyper3例,normo12例,hypo2例に分類され,hyper群では他の2群に比べ10項目中非妊時BMIのみが高く(p<0.01),また,インスリン抵抗性(I/G高値)が認められた(p<0.05).normo群では,LFDを41.7%に認めC群に比べて高率であった(P<0.05).3)GDM16例のうち8例に産後の耐糖能異常を認めた(DM2例,IGT6例).これら8例の妊娠時IIは0.25±0.22であり,耐糖能正常(n=8)の0.71±0.33に比較し低値であった(p<0.05).GDMでインスリン分泌の低下が,LFDの発症と産後耐糖能異常の発症に関連することを初めて明かとした.妊娠時のIIは産後耐糖能異常の発症を予知する上で有用である可能性がある.本研究は,Diabetic Medicineに投稿中である.
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