研究概要 |
[目的]1999年に日本糖尿病学会の診断基準が改定された.妊娠糖尿病例を産後3ヵ月の75gOGTTで正常群と異常群(糖尿病型・境界型)に分け,妊娠中の耐糖能検査・臨床所見との関連を調べることを目的とした. [対象]1996年から2000年までに北大において診断・管理した妊娠糖尿病27例のうち,産後1ヵ月および3ヵ月に75gOGTTを施行できた16症例を対象とした. [方法]新診断基準に基づき,産後3ヵ月の75gOGTTで正常群と異常群(糖尿病型・境界型)に分類した.あわせて妊娠中のインスリン分泌動態および抵抗性や臨床所見について比較検討した. [結果]1)旧基準では,16例中異常群は12例(75%)であったが,新基準では7例(43.8%)であった.この7例のうち,3例は産後1ヵ月では75gOGTTで正常と診断されていた.2)新基準の異常群(7例)と正常群(9例)との間では妊娠中の血糖動態,BMI,HOMA法によるIR値,HbA1c,インスリン治療の有無などには差異を認めなかったが,Insulinogenic Index(0.198vs.0.676),AUC insulin(3,131vs.10,568μU・min/ml)およびAUC insulin/AUC glucose(0.163vs.0.535)に有意差を認めた. [考察]耐糖能異常の発見には産後1ヵ月よりも3ヵ月以降の耐糖能検査が望ましいことが判明した.妊娠糖尿病では妊娠中のインスリン分泌動態を調べることによって,産後耐糖能異常の発症リスクを予測できる可能性がある.以上の知見を「妊娠糖尿病におけるインスリン分泌動態および抵抗性の検討」として第12回北海道周産期カンファランス(札幌,平成13年9月1日),および「GDMにおけるインスリン分泌動態,抵抗性と周産期異常,産後耐糖能異常との関連」として第17回日本糖尿病・妊娠学会,ワークショップ(東京,平成13年12月2日)で発表した.
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