妊娠に起因した睡眠障害に関する基礎的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11671600
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 木村 昌由美 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助手 (40216859)
• キーワード: 妊娠 / 睡眠障害 / ホルモン / サイトカイン / ラット / コロニー刺激因子 / プロラクチン / 成長ホルモン

研究概要

今年度はラットを用いた実験系において、1)妊娠開始に特異的な生殖器官由来のサイトカインの睡眠活性を分析し、2)そのサイトカインのホルモン分泌に対する作用を睡眠活性と相関させて分析した。また、3)新規に発見されたプロラクチン分泌誘発ペプチド(PrRP)のラット睡眠に対する効果を中枢投与によって検討した。
1)顆粒球/マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)およびマクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF)は妊娠初期の生殖器官内で著しく産生されるサイトカインである。これを雄ラット脳室に投与すると(それぞれ10pmol)、GM-CSFは夜間のノンレム睡眠(27%増)・レム睡眠(203%増)、M-CSFはレム睡眠(54%増)のみを有意に増加させた。また、M-CSFには脳温上昇効果もみられた。
2)睡眠-覚醒リズムと内分泌環境の変化は頻繁に連動することが知られている。したがって、GM-CSFならびにM-CSFの睡眠誘発作用はホルモン分泌の変化がもたらされた結果に起因するとも考えられるため、これらCSFsが脳内で神経内分泌的パラメーターに影響をおよぼすかどうかを調べた。結果、視床下部において一酸化窒素(NO)の放出量が両CSFs投与後有意に増加し、この変化によってGM-CSFはソマトスタチンを、M-CSFは成長ホルモンの分泌を促進させることが示唆された。
3)PrRPを雄ラットの脳室に投与すると、ノンレム睡眠は1,10pmolで、レム睡眠は0.1,1pmolの用量で有意に増加した。連続採血の実験結果から、レム睡眠の増加だけが血清プロラクチン値の上昇と相関した。

研究成果

• [文献書誌] Kimura, M.: "Colony-stimulating Factors (CSFs) in REM sleep and nonREM sleep requlation."Psychiat. Clin. Neurosci.. 53. 105-107 (1999)
• [文献書誌] Zhang, S.-Q.: "Effects of prolactin-releasing peptide (PrRP) on sleep requlation in rats."Psychiat. Clin. Neurosci. (in press). 54. (2000)
• [文献書誌] Zhang, S.-Q.: "Effects of prolactin on sleep in cyclic rats."Psychiat. Clin. Neurosci.. 53. 101-103 (1999)
• [文献書誌] Kimura M.: "Somatotrpic-somatostatic action of colony-stimulating factors."Neuroimmunomodulation. 6. 454-454 (1999)
• [文献書誌] Zhang, S.-Q.: "Prolactin-releasing peptide (PrRP) in prolactin release and sleep-wake requlation."Neuroimmunomodulation. 6. 454-454 (1999)
• [文献書誌] Zhang, S.-Q.: "Effects of prolactin-releasing peptide on sleep requlation in rats."Soc. For Neurosci. Absts.. 25. 1137-1137 (1999)
• [文献書誌] Inoue,S.: "Rapid Eye Movement Sleep"Narosa Publishing House. 16 (1999)
• [文献書誌] 木村昌由美: "日本女性科学者の会ニュース 第82巻 特別号"日本女性科学者の会. 8 (1999)