研究概要 |
本研究ではラットを用いた実験系において、1)妊娠開始に特異的な生殖器官由来のめサイトカインの睡眠活性を分析し、2)そのサイトカインのホルモン分泌に対する作用を睡眠活性と相関させて分析した。また、3)その妊娠特異的なサイトカインの中枢作用を阻害し、妊娠によって変動した睡眠パターンがどのように影響を受けるかを調べた。さらには、4)新規に発見されたプロラクチン分泌放出ペプチド(PrRP)のラット睡眠に対する効果についても検討した。 1)顆粒球/マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)は妊娠初期の生殖器官内で著しく産生されるサイトカインである。これを雄ラット脳室に投与すると(10pmol)、夜間のノンレム睡眠は27%、レム睡眠は203%増加した。 2)睡眠-覚醒リズムと内分泌環境の変化は頻繁に連動することが知られている。したがって、GM-CSFの睡眠誘発作用はホルモン分泌の変化がもたらした結果に起因するとも考えられるため、脳内における神経内分泌的パラメータに対する影響を調べた。結果、視床下部においてGM-CSFは一酸化窒素(NO)の放出を刺激しソマトスタチンの分泌を促進させることが明らかとなった。 3)妊娠ラットにGM-CSF中和抗体、または対照IgG抗体をそれぞれ妊娠開始日から4日間、連続して脳室内投与した。GM-CSF抗体を投与された群の妊娠初期4日間の暗期睡眠量は対照群と比較して、ノンレム睡眠が76.9%に、レム睡眠が54.0%に抑制された。 4)PrRPを雄ラットの脳室に投与すると、ノンレム睡眠は1,10pmolで、レム睡眠は0.1,1pmolの用量で有意に増加した。連続採血の実験結果から、レム睡眠の増加は血清プロラクチン量の上昇および血清成長ホルモン量の低下と相関した。
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