本年度の本研究の主目的は、ヒトのエストロゲン受容体β(ERβ)の遺伝子における多重第一エキソン機構が存在を解析することであった。子宮内膜より調製したtotal RNAを鋳型として、第二エキソン(開始コドンを含むエキソン)に設定したantisense primerを用いて5'-RACE法を施行し、得られたクローンの塩基配列を解析した。また、このクローンの新規配列部分の由来を、genomic cloningにより解析した。その結果、ヒト子宮内膜において、二種類の独立した単一の非翻訳第一エキソン、すなわちエキソン0Nならびにエキソン0K、に由来するmRNA isoformsの存在が明らかになった。これらのERβ mRNA isoformsの子宮内膜、子宮筋層および肝臓における発現は相互に異なっていた。したがって、ヒトERβ遺伝子には、少なくとも二種類の5'-非翻訳第一エキソンが存在し、その組織特異的な発現調節に多重非翻訳第一エキソン機構が関与していることがはじめて明らかとなった。本研究では、今後、この成果に基づいて、子宮内膜癌の発癌に伴うERβの遺伝子発現の変化を中心に検討を開始する。
|