研究概要 |
子宮頚癌において、thymidine phosphorylase(TP)であるplatele-derived endothelial cell growth factor(PD・ECGF)の発現は間質に特徴的で、血管新生や予後と相関し、とくにリンパ節転移巣における発現が高い症例では予後は著しく不良で、転移リンパ節におけるPD-ECGFの発現がより適切な予後のインディケーターになることがわかった。また、子宮頚癌患者において、血清PD・ECGFはその進展に対して適切な腫瘍マーカーと成りうることがわかった。さらに、血管新生の転写因子であるets-1の発現はPD-ECGFとIL-8の発現とリンクしていた。したがって、PD-ECGFおよびets-1は増殖進展に関与する血管新生に働くと考えられ、TPの基質である5FUの前駆体やets-1の阻害薬はとくに転移巣の進展に奏効すると考えられた。卵巣癌において、vascular endothelial growth factor(VEGF)のアイソフォームであるVEGF_<165>およびets-1の発現は組織型や進行期による差はないが、予後と相関し、とくに腹膜播腫巣において発現が高い症例では、予後が不良であった。したがって、VEGFおよびets-1は増殖進展に関与する血管新生に働くと考えられ、抗VEGF抗体や抗VEGF受容体のtyrosine kinase ihibitorやets-1はとくに腹膜播腫巣に奏効すると考えられた。子官内膜癌において、basic fibroblast growth factor(bFGF)の発現は臨床進行期と相関する。PD-ECGFおよびVEGFの発現は部分的に性ステロイドで規定されており,子宮内膜癌の早期における進展に関与していた。また、IL-8は筋層浸潤とともに飽和状態まで誘導され、angiogenic switchとして働くことがわかった。ets-1の発現は分化型の子宮内膜癌においてVEGFの発現とよく相関し、低分化型の子宮内膜癌においてはbFGFの発現と相関した。このことから子宮内膜癌における血管新生を制御するために、進行度と分化度に応じて、標的因子を選択することによって、奏効率の高い治療戦略がとれると考えられた。
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