虚血よる脳損傷は、その後に起こる再還流時の酸化ストレスも細胞障害となることが明かとなり、フリーラジカルが重要とされている。しかし実際の脳障害は、フリーラジカルの発生に引き続き生じる様々な因子が原因となり、フリーラジカルによって産生される代表的な脂質過酸化物である4-hydroxy-2-noneal-protein(HNE)は、細胞内蛋白と結合し蛋白機能を障害することが明らかにされている。これまで脂質過酸化物である4-hydroxy-2-noneal-protein(HNE)の出生前後における脳での発現を確認する目的で死産児、新生児死亡の抗HNE-protein抗体による免疫組織染色を行い検討したところ、小脳、橋、海馬の神経細胞に発現が認められ、さらに脳虚血時に認められるpontosubicular neuron necrosisに陥っている細胞にその発現が強く認められた。次にHNEに結合する蛋白を同定する目的で、脳のホモジェネートをこの抗体でウェスタンブロッティングを行ったところ、75-kDaのバンドが強く発現しており、iron-sulfur protein of complex I(NADH)と考えられた。 この作用を生化学的に検討するために、胎児の血管内皮細胞を低酸素培養し、低酸素性脳障害の原因となりうる物質の変化を検討したところ、強力な血管収縮物質であるAngiotensin IIを産生するAngiotensin converting enzymeが、低酸素培養によって血管内皮での産生が亢進することが判明した。
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