研究概要 |
1.胎盤性黄体刺激ホルモンとして、ラット妊娠12日目の胎盤を24時間培養して得られた胎盤培養上清を偽妊娠ラットの黄体退縮期に投与したところ、血中progesterone(P)値の上昇と共に黄体内SODの活性とmRNAレベルも増加した。すなわち胎盤性黄体刺激ホルモンが黄体をレスキューすると共に黄体内のSOD発現を増加させることが明らかとなった。今年度は、この胎盤性黄体刺激ホルモンの作用の詳細を検討した。上記の胎盤培養上清をチャーコール処理し、ステロイドホルモンを除去した後に投与すると、血中P値や黄体内SODの増加はみられなくなった。しかし、このチャーコール処理した胎盤培養上清と共にtestosteroneまたはestrogenに変換されないtestosteroneであるdihydrotestosteroneを投与すると、血中P値や黄体内SODは増加した。すなわち、胎盤性黄体刺激ホルモンのうち、testosteroneがestrogenに変換されなくても黄体に作用していることが明らかとなった。2.ヒトの黄体について、妊娠に伴う黄体機能の延長に黄体内SODが関与するかを検討した。妊娠黄体のCu,Zn-SODの活性とmRNAレベルは、黄体期中期のそれらに比し有意に高値を示し、また退縮期では、有意の低値を示した。一方、過酸化脂質濃度は、妊娠黄体で著しい低値をとり、退縮黄体では高値を示した。さらに、黄体期中期の黄体をhCGで培養したところ、P分泌の増加と共に黄体内SODの活性とmRNAレベルも増加した。以上のことから、ヒト妊娠に伴う黄体機能の延長には、胎盤性黄体刺激ホルモンであるhCGによる黄体内のSODの増加が関与していることが示唆された。
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