研究概要 |
従来より研究を進めてきた上皮性卵巣癌におけるmicrovessel density (MVD), vascular cuffing (VC)およびvascular endothelial growth factor (VEGF)発現を抗CD34抗体、抗VEGF抗体を用いて免疫組織化学染色法で評価し、予後との関連について検討した結果をCancer Letters誌上に発表したが、その内容は以下に述べる。卵巣癌105例について、それぞれについてprogression-free survivalとの相関について検討し、I, II期ではMVD, VC, VEGFはいずれも予後良好な因子であったが、III, IV期では予後との相関を認めなかった。I.II期症例について組織型別に予後因子を解析すると、明細胞腺癌のみでMVDは有意に予後と相関した(P<0.0001)。多変量解析ではMVDと進行期、年齢が予後因子として見い出された。これらの結果より卵巣癌の組織型により予後因子としての血管新生の意義が異なることが示され、抗癌剤の局所の癌への移行に関与していることが示唆された。婦人科腫瘍において発生部位により血管新生の腫瘍の発育・進展への関わりが異なることが示唆された。 また卵巣癌についてヒト卵巣癌細胞が産生する血管新生因子が二次元単層培養時より三次元培養系で細胞集塊を作らせた時にその発現が亢進することを明らかにするため、ヒト上皮性卵巣癌細胞株5株をヌードマウスに皮下移植し,得られた腫瘍組織を4種の血管新生因子(VEGF ; Vascular Endothelial Growth Factor, bFGF ; basic Fibroblast Growth Factor, PD-ECGF ; Platelet derived-Endothelial Cell Growth Factor, IL-8 ; Interleukin-8)の各抗体を用いて免疫組織化学染色による評価を行っている。
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