研究概要 |
受精卵の子宮内膜への侵入および脱落膜化に際して、子宮内膜、特に間質細胞において、受精卵由来のPAFがいかなる細胞間相互作用に関わっているかを明らかにすることを目的として研究を計画した。平成12年度は,平成11年度に行った子宮内膜間質細胞の培養系におけるPAFによる各種サイトカイン、特にケモカイン産生を再検討するとともに,PAF受容体の発現を検討した。 子宮筋腫摘出時に採取された子宮内膜を細切後,0.25%collagenase処理し,遠心し,その後60μmメッシュを通過させて子宮内膜細胞と間質細胞を分離した。得られた間質細胞を10%FCS加PRMIの培養液で2×10^5cells/wellづつ培養した。 PAF、PAF receptor antagonist(Y-24180,CV2086)を濃度的、時間的変化を加えて添加し、その培養上清中のインターロイキン-1β(IL-1β)、IL-6、IL-8、monocyte chemotactic protein-1(MCP-1)をELISAを用いて定量し、また、これらのmRNAの発現量を分子生物学的手法を用いて検討した。 PAFは,子宮内膜間質細胞のIL-6,IL-8,MCP-1の産生を濃度依存性に促進した。IL-βは産生が認められず,PAF刺激によっても誘導されなかった。Y-24180およびCV2086は,PAF刺激の10分以上前に添加しておくことにより,上記のPAFの作用を完全に阻止した。また,これらのサイトカインのうち,IL-6,IL-8,MCP-1のmRNAの発現もPAF刺激により促進され,CV2086により,この刺激作用は阻止された。RT-PCRにより,PAF受容体の発現が確認された。 以上の結果から,受精卵由来のPAFは,PAF受容体を介して子宮内膜間質細胞からのIL-6,IL-8,MCP-1の産生を促進することにより,その着床に何らかの生理的作用を有することが示唆された。
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