研究概要 |
本研究では子宮内膜癌や卵巣癌での遺伝子異常の解明を行い、子宮内膜癌で23%、卵巣癌で3%のRER異常を認めた。とくに卵巣癌では類内膜型におけるRERの検討を行い、組織型として共通の遺伝子異常の存在が推察された。また子宮内膜癌においてRER陽性例は予後不良傾向があった。またRER陽性例にMMR遺伝子(hMLH1,hMSH2)の変異は1例のみであった。 さらに、卵巣癌61例、子宮内膜癌35例についてβ-catenin遺伝子の変異およびその蛋白の発現を検討し、それぞれ5例(8%)、5例(14%)にβ-catenin遺伝子の変異を確認した。骨盤リンパ節への微小転移の検出にもβ-catenin遺伝子の変異の存在が有用であった。 またPeutz-Jegher Syndromの原因遺伝子としてSerine/Threonine Kinaseの働きをしているSTK11がごく最近報告され、30例の卵巣癌においてSTK11の変異をSSCP-Sequence分析で検討した。exon6のCCG-CTG(Pro281-Leu)の変化が1例認め、さらにSSCPにてexon5に2例のextra bandを認めた。 卵巣癌の新規抗癌剤としてTaxolあるいはTaxotereが使用され、その化学療法の有効性を治療前にそれぞれの薬剤ごとの予知が可能かをp53,BAX, Bcl-2などの遺伝子発現を検討することで、薬剤耐性の機序解明を試みた。その結果、卵巣癌株におけるTaxol誘発apoptosisの発現にはp53とは独立した経路とストレス反応に誘発された経路が重要な役目を担い、これらの抑制とbag-1やhsp70の過剰発現がTaxolの獲得耐性に重要であることが判明した。
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