前年度の研究では、ラットのOHSSモデルで、GnRHa投与によりvascular endothelial growth factor(VEGF)とそのリセブターであるFlt-1とKDR/Flk-1の□RNA発現を抑制したことから、GnRHaのOHSS発症予防薬としての可能性を示唆した。今回OHSSのハイリスク症例に実際に臨床応用を試みた。つまり、通常は体外受精では□CG投与時にGnRHa投与を中止していたが、全胚凍結後引き続き□通間GnRHaを継続投与した。すると全胚凍結のみの症例では約10%に入院を要するearly typeのOHSSの発症症例があったが、GnRHaを継続した症例では□例も入院を要するOHSS症例はなかった。実際、OHSSの病態を反映しているヘマトクリット、白血球数はGnRHa継続症例で有意に低値であった。このことから体外受精・胚移植におけるOHSSハイリスク症例ではGnRHa継続投与は有用な予防法である事が明らかになった。 また、我々は過排卵幼若メスラットの黄体期にGnRHaを投与するとstructural luteolysisを誘導し、そのメカニズムの一つはmatrix metalloproteinaseの発現の増強である事を報告して来た。今回、このGnRHaの直接作用による黄体中のVEGF、Flt-1、KDR/Flk-1の発現低下がstructural luteolysisのメカニズムの一つである事を明らかにした。これは、黄体形成後の黄体に対してもGnRHaが有効である事を示しており更なるOHSSの治療法の開発につながると思われる。
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