研究概要 |
A.20日齢のラットにDHEAを15日間連日投与する事により卵巣は組織学的にpolycystic ovaryの形態を示した.またホルモン的にもtestosterone、androstenedione,DHEASがコントロールに比して高値を示した。一方同日齢のラットの卵巣は黄体が形成されていた事から排卵が起きていた事が判明した。つまり、DHEAによりPCOラットの卵巣は排卵が抑制されPCOの形態と男性ホルモンの上昇を呈したものと思われる.このときの排卵に寄与するタンパク分解酵素であるMMP-2の発現が有意に低下し、またcollagenをクロスリンクするLOX発現が上昇していた事の2つが相俟って排卵障害が起きる事が示唆された。 B.PMSGを4日間連日投与する作成するOHSSラットの卵巣は通常の過排卵ラットの卵巣に比して有意に腫大していた。ホルモン的にもprogesterone(P4)、estradiol(E2)も高値を示しOHSSの特徴を示していた。このラット卵巣ではOHSS関連分子であるVEGFやFlt-1、KDR/Flk-1の発現が上昇傾向があった。これにGnRHaを併用投与すると(特にhCG投与後だけでも)卵巣の腫大は抑制され、P4、E2も低下し、またVEGF発現も有意に抑制された。この事からGnRHaはOHSS発生の予防薬として使用できる可能性が示唆された。 C.IVF-ET症例でhCG投与時の卵胞が20個以上でE2が3000pg/ml以上のOHSSのハイリスク症例に全胚凍結を施行した上、GnRHaをhCG投与後も1週間継続投与した。コントロールでは10%に入院を要する腹水をともなうOHSSが発生したのに対しGnRHa継続症例には1例も発生しなかった。また白血球、ヘマトクリットの上昇も有意に抑制された。一方採卵率、受精率に差はなく、その後の凍結胚移植での妊娠率に差はなかった。この事から本法はOHSS発生予防に極めて有用な方法と思われた。
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