前年度までにethylene glycolを用いたVitrification法によりマウス卵巣組織片の凍結保存を行い、融解後の卵胞卵子(GV期卵)が体外培養することによりMII期へ成熟することを示した。今年度はそのようにして得られたMII期卵を用いて体外受精を試みた。凍結融解後のマウス卵巣組織より回収したGV期卵の成熟率は73.6%で、新鮮GV期卵を用いた場合の92.7%と比較して低率であった。同様に凍結融解後のマウス卵巣組織より回収したGV期卵の受精率は56.1%であり、新鮮GV期卵を用いた場合の84.3%と比較して低率であった。そこで凍結融解法の再検討を行い、更なる検討を加えてみた。 6週令のB6D2F1雌マウスにPMSG5IUを投与し、48時間後摘出した卵巣を2分割にして実験に用いた。耐凍剤処理は、(1)EFS10/15分(25℃)、EFS20/15分(4℃)、EFS40/5分(4℃)(2)EFS10、EFS20の処理時間を10分に改変した2法で行い、液体窒素中に保存した。融解は、凍結チューブを室温(25℃)にて30秒間保持した後、(A)EFS20/10分(4℃)、EFS10/10分(25℃)、0.5M Sucrose/10分(25℃)(B)EFS10/10分(4℃)、0.5M Sucrose/10分(25℃)の2法で行った。融解した卵巣組織中よりGV期卵を採取し、Waymouth MB752/1中で培養を行った。 解凍後の卵巣組織中より採取したGV期卵の生存率は(1)-(A)、(1)-(B)、(2)-(A)、(2)-(B)で、それぞれ55.4%、80.5%、48.1%、13.6%だった。また、培養を行った結果、MII期への成熟率は、61.1%、72.7%、37.3%、5.9%だった。これらのことから卵巣組織片の凍結融解法として、(1)-(B)の方法が有効であることが確認された。
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