研究概要 |
本年度実施実験はトリプシンインヒビターを強制発現する培養絨毛細胞を作成し,以下の実験をおこなった. [実験目的]PP5(Placental Protein5)/TFPI-2(Tissue Factor Pathway Inhibitor-2)は、癌の浸潤、転移に関与するセリンプロテアーゼインヒビターであり、外因系凝固阻害因子TFPIのhomologueであることが知られているが、その生理的役割は未だ明らかではない。我々は既にPP5/TFPI-2がヒト胎盤において高発現し、mRNAがsyncytiotrophoblastに局在することをin situ hybridization法を用いて報告した。今回、PP5/TFPI-2を強制発現する培養絨毛細胞を作成し検討した。 [方法]培養絨毛性腫瘍細胞にPP5/TFPI-2を強制発現させ,細胞生物学的検討,invasion assay,nude miceへの移植腫瘍の検討を行った. [成績]培養絨毛性腫瘍細胞にPP5/TFPI-2を強制発現させ,細胞生物学的検討をこころみたところ,plating efficiencyの上昇がみとめられた.Matrigel/Boyden chamberをもちいたinvasion assay,では,浸潤能が低下した.さらに,nude miceへの移植腫瘍の検討を行ったところ,組織学的に浸潤性増殖の抑制がみられた,syncytiotrophoblastの粗面小胞体および微細絨毛表面にPP5/TFPI-2の集積が認めれられた。ヘパリン添加により溶液中にPP5/TFPI-2が検出された。[結論]PP5/TFPI-2は癌細胞の表面で発現することにより、matrix protease inhibitorとして,がん細胞の浸潤や,浸潤に先立つ細胞の分散に抑制的に働いている可能性が示唆された. 次年度以降はさらにヒト卵巣がんにおける機能的役割について検討をかさねる.
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