1、胎盤トロフォブラスト上にはHLAはclass Iaおよびclass II抗原は発現せず、HLA-Gのみが発現しているとされていたが、我々はこれまでにHLA-Eも発現していることを明らかにしてきた。今回さらに、抗HLA-Fモノクロナル抗体を作製し、これを用いてHLA-Fも発現していることを明らかにした。HLA-Fは各種cell lineにおいては、細胞質内に発現するものはあるが、細胞表面に発現するものは現時点では見いだせない。しかし、トロフォブラストにおいては、母体脱落膜に深く侵入しているextravillous trophoblastのみは免疫組織染色法により細胞表面にも強く発現しているような像がみられた。これは母児の接点においてHLA-Fが何らかの重要な機能を果たしていることを示唆している。 2、HLA-Gの発現と各種疾患との関係についても検討してきた。これまでpreeclampsiaの病因はHLA-Gの発現低下あるいは消失に関連しているといういくつかの報告がなされているが、我々は正常胎盤においてもHLA-Gの消失している部位はあり、そのトロフォブラストはpreeclampsiaの場合と同様に常にフィプリンに囲まれた状態にあった。それらの形態からみて、なんらかの炎症等の結果、トロフォブラストがHLA-Gのみならず、生合成全般が低下あるいは不能となっていることを示唆していた。
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