研究概要 |
Hepatocyte growth factor(HGF)のantagonistであるNK4,およびurinary trypsin inhibitor(UTI)には,卵巣癌の腹膜播種,浸潤抑制作用があることをすでに我々は確認している。本年度は卵巣癌遺伝子治療への臨床応用を目指し,NK4およびUTIのウイルスベクターの作製を試みた。非病原性で,非分裂細胞への導入が可能であるアデノ随伴ウイルス(AAV)への導入を行った。NK4発現ベクター(pCMV-NK4-IRES-bsr)およびUTI発現ベクター(pCMV-UTI)にITR配列を付加し,アデノフリーシステムによりNK4発現AAVベクター(AAV-NK4)およびUTI発現ベクター(AAV-UTI)の作製に成功した。これらのウイルスベクターを卵巣癌細胞株OVCAR-3を対象に,感染実験を施行した。その結果,MOI10^5〜10^6において培養上清中に,NK4およびUTIの分泌が確認され,またscratch wound assay,skim-milk assayによりそれぞれの活性も確認された。またUTIの活性基であるHI-8を取り出し,ATF-HI-8発現ベクター(pCMV-ATF-HI-8-IRES-bsr)作製に成功した。 子宮頚癌細胞株SKG-IIにthymidylate synthase(TS)を遺伝子導入して作製されたTS強発現株(SKG-II/TS)は,コントロール(SKG-II/LUC)に比べて放射線感受性の低下が確認された。したがってTS高発現子宮頚癌症例の予後不良の原因のひとつに,放射線治療に対する抵抗性が示唆された。TS強発現とDNA修復能の関係をみるため,DNA修復関連物質であるXRCC-1,DNA polymerase β,DNA ligase IIIなどの活性を検討している。
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