研究概要 |
近年抗リン脂質抗体が血栓症、不育症など多方面の分野で注目を浴び研究されている。電気的陰性リン脂質に対する抗体の多くはリン脂質に結合したβ_2-glycoprotein Iやprothrombinを認識するのに対し、電気的中性のリン脂質であるphosphatidylethanolamine(PE)に対する抗体の多くはPEに結合したkininogenを認識することが最近になって解明された。今回我々は、今までの基礎的データに基づきkininogenのdomain 3に注目し、その合成ペプチドを用いて抗PE抗体の認識部位を検討した。kininogen,domain 3のアミノ酸配列を文献の考察をふまえ4個所で切断し、Leu331-Met357(LDC27)、Pro258-Ala277(PEL20)、Gly235-Glu259(GKD25)、Asn276-IIe300(NAT26)、Lys297-Ser330(KKY34)の5つの合成ペプチドを作製し、それをアミノプレートに共有結合により固相化し、PEに結合したkininogenを認識する抗PE抗体(kininogen依存性抗PE抗体)を用いて、抗PE抗体の認識部位のmappingを行った。不育症患者の抗PE抗体の多くは、kininogen,domain 3上のLDC27を認識することが示唆された。この部位はcystein proteinase inhibitor活性を持ち、血小板の活性化を抑制し、抗血栓活性に携わる部位を含む。kininogenを認識する抗PE抗体が血小板凝集能を亢進させる事がすでに示唆されているが、今回の我々のデータはこの病原性を支持するものと言える。
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