研究概要 |
子宮体癌の転移形式はリンパ行性転移であるが、転移のリスク因子としては子宮筋層内への癌浸潤の深さと、リンパ管や毛細血管などの脈管への浸潤の有無が最も有意な因子として知られている。我々は子宮体癌の間質において血管増殖因子であるThymidine Phosphorylase(以下TPと略)が発現していることを初めて報告した[H.Sakamoto etal : Gynecologic Oncology,1998].さらにこの発現は子宮内膜間質に集簇するmacrophageに特に強く見られている。すでに我々は次頁に概略をのべるように、この体癌由来の液性因子(仮称Macrophage TP Inducing Factor : MTPIF)の精製に着手した。 現在までの経過: (1)MTPIFの精製とそのアミノ酸配列の一次構造の決定を継続中 (2)MTPIFのcDNAの単離(予定) (3)MTPIFの遺伝子導入による機能解析(予定) 精製、同定の研究計画は遅れており、早急に予定を消化する。 一方体癌の末期症例では、化学療法剤に対する耐性が生じ、臨床的な問題となる。そこで体癌株(Ishikawa)よりcis-platinum耐性株をclonal selection法で分離した。このISIW+株では、MTPIFの分泌が親株に比較して約100倍高く、このMTPIFが薬剤耐性の獲得に関与することが示唆された。今後はこの株においてMDR-1,MRP,LRPの薬剤耐性遺伝子発現も検討する予定である。
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