研究概要 |
ヒト卵巣癌の末期症例においては、腹水の貯溜が頻繁に見られる、これは患者のQOLを悪化させるのみならず、病状の進行を促す予後不良の徴候である。われわれはこの腹水中より、macrophageにおいてチミジンフォスフォリラーゼを誘導する因子を検出しMTPIF(Macrophage Thymidine Phosphorylase Inducing Factor)と呼び、その生理的活性の検討を行っている。 いままでにMTPIFはマウス移植腫瘍に血管増殖を刺激することが明らかになった。また培養系の検討では、MTPIFが癌細胞における耐性獲得に関与することが示唆された。このメカニズムは多剤耐性遺伝子であるMDR-1,MRP,LRPの発現を促すためであることを示唆する所見を得ている。 このことより、まず子宮体癌細胞Ishikawa株を用いてシスプラチン(CDDP)存在下で長期間の培養を行うことで、耐性sub-cloneの分離を試みた。clonal selectionにより得られたCDDP耐性株ISIW+と親株であるIshikawa株の比較では、前者においてMTPIFが多く発現していた。一方MTPIFの存在下で培養された細胞では、SXRの発現亢進が見られた。このことからMTPIFがSXRのリガンドになる可能性があり、現在この点を検討中である。
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