子宮内環境においては酸素供給は胎盤を介して行われるが、正常状態での胎児胎盤循環において、酸素分圧は成人の30%程度に過ぎない。さらに臍胎の圧迫や子宮収縮などで容易に虚血再環流ストレスに暴露されている。この環境下で胎児胎盤組織は、アデノシンの組織産生を増加することで組織臨界酸素分圧を保ち、虚血耐性を維持しているが、この維持機構そのものまだ明らかにされるに至っていない。しかし最近成人の心不全の際に、心組織の虚血耐性の獲得にアデノシンA1受容体を介したメカニズムが報告され注目を集めている。 本研究ではアデノシンをエンドエフェクターとするこの虚血耐性発現機構に関し検討し、その結果、 (1)、胎児においては虚血心筋組織においてアデノシンの産生が劇的に亢進し、 (2)、その発現機構に5′nucleotidaseを介したischemic preconditioningが関与していることを解明した。 今後は、胎児心筋の虚血耐性メカニズムを成人の虚血性疾患の病態解明に投射し、臨床応用するstrategyを多角的に解析する予定である。
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