研究概要 |
本年度は,プロペントフィリンが胎児低酸素症における脳温変化におよぼす影響を解析するために以下の実験を行い,その成果を日本産科婦人科学会雑誌に投稿氏,受理された. 11頭の妊娠120-127日(term=147日)のヒツジを2%ハロセン麻酔下に手術を行い,胎仔頚動脈を通して上行大動脈に温度センサーと血圧測定および採血用のカテーテルを挿入,プロペントフィリン注入用のカテーテルを胎仔頸静脈に挿入した.さらに胎仔の頭蓋骨を通して2つの温度センサー(IT-23,Physitemp)を左大脳皮質に装着した. 実験は,コントロール群(n=6)では,70分の観察の後オクルーダーに生理食塩水を5-8mL急速に注入することによる臍帯圧迫5分間を30分間歇で4回実施,以後,1時間の回復期の観察をおこなった.また,プロペントフィリン群(n=5)では約20分の観察後,プロペントフィリン(0.01mg/kg/min)を38℃の生理食塩水に溶解し,0.05mL/分のスピードで60分間胎仔頸静脈より注入した.注入終了5分後から前述の5分間臍帯圧迫・30分間解放を4周期実施した. 成績として,(1)プロペントフィリン群では1回目の臍帯圧迫ではコントロール群と比較して胎仔核温の上昇が軽度で,また有意差はないものの脳温の軽度上昇を認め,その結果コントロール群のような胎仔脳温・核温差の低下が認められなかった.また,(2)4回目の臍帯圧迫時は両群とも同様の胎仔核温・脳温差の低下を認めたが,圧迫解放後の脳温・核温差の回復時間に差が認められた.
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