研究概要 |
1.腹膜播種に関連して発現する遺伝子の解析 組織型の異なる卵巣癌培養細胞株10株について、癌細胞中に発現する癌遺伝子産物(ErbB2,EGFR)のphenotypeをWestern blottingにより解析し、以下の結果を得た。 (1)ErbB2は殆どの細胞で発現し、さらにRMG-1(明細胞)及びHTOA(漿液性)に顕著に、またOVISE(明細胞)に中等度に発現した。 (2)EGFRは殆どの細胞で発現し、さらにOVISE(明細胞)においてErbB2との共発現がみられた。 以上の癌遺伝子はいずれも卵巣癌患者の予後に関与する重要なfactorであると共に、特にErbB2及びEGFRは転移増強に働くことが報告されている。さらにErbB2及びEGFRはいずれも抗癌剤耐性に関与する因子(抗癌剤によるアポトーシスを阻害)として近年注目されている。 2.卵巣癌診断及び治療への臨床応用 本研究の成果により、卵巣癌細胞の転移能の差として捕えられることが可能となり、臨床面において複合糖脂質による転移の予後診断、さらには転移関連糖鎖抗体、または同ペプチドの腹膜播種阻害による治療へとつながり、卵巣癌の予後の改善が得られるものと考える。また、ErbB2由来ペプチドを用いたHLA-24拘束性CTLクローンが樹立されれば、細胞障害活性を利用した腫瘍免疫法へも展開が広がる可能性がある。さらに、ErbB2に関するモノクローナル抗体であるHerceptinは我々のErbB2高発現株RMG-1担癌マウスに対する単独、またはTAXOLとの併用投与実験において、いずれの場合にも腫瘍増殖抑制効果を示した。その結果、抗ErbB2抗体(Herceptin)による治療は、抗癌剤耐性卵巣癌及び再発癌の治療にも有効である可能性が示唆された。
|