われわれはヒトのアロマターゼ遺伝子の胎盤特異的発現に関わるタンパクとしてヒトGCMa/1を、酵母one-hybrid法により同定し、従来、哺乳類での機能が不明であった、このタンパクが胎盤特異的な転写因子であることを1999年に初めて示したが(Yamada et al.J.Biol.Chem 1999 274 32279-32286)、本年になって、海外の複数のグループがGCMa/1ノックアウトマウスでは胎盤形成不全による胎性致死となることを報告し、本因子が胎盤の発達、特に母体との栄養、ガス交換の場であるLabirinthine(ヒトでは絨毛)組織の分化に不可欠であることが証明された。 本年、われわれは、ヒトBACゲノムライブラリーのスクリーニングをおこない、ヒトGCMa/1遺伝子を含むBACクローンを得、これに基づいて、ヒトGCMa/1の遺伝子構造、染色体上の位置、および全塩基配列を明らかにし、発表した(Yamada et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.2000 278 134-139)。 また大腸菌にヒトGCMa/1タンパクを強制発現させ精製し、このタンパクに対する特異抗体(ウサギポリクロナル)を作成した。予備的な実験から、この抗体は期待される特異性を示している。この結果、免疫染色法によりヒトの胎盤の発達におけるGCMa/1の発現状況、胎盤の発達異常とこのタンパクの発現の関連等を調べることが可能となった。正常遺伝子の全塩基配列を明らかにし、クローンとして保存しているので、ヒトでこのタンパクの発現異常が認められた場合にはその異常に遺伝子が関与しているかについても検討が可能となった。
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