タモキシフェン投与下の子宮内膜についてエストロゲンリセプター(ER)、プロゲステロンリセプター(PR)、細胞増殖のマーカーとしてKi-67、また細胞増殖因子として上皮細胞増殖因子のリセプター(EGFR)を免疫組織学的に検討した。その結果タモキシフェンが子宮内膜に与える影響は、閉経前後で異なっており、エストロゲン存在下では細胞増殖抑制に、エストロゲンが非存在下では細胞増殖促進に働き、その働きにはEGFRが関与することを報告した(Int J Gynecol Pathol 1999:18:297-303)。また子宮内膜癌の特性を明らかにするために、子宮内膜癌の脈管侵襲に注目し、それが予後と密接に関係していることを報告した(Cancer1999;86:2090-7)。さらにタモキシフェン内服中の閉経後婦人に子宮内膜ポリープの発生が多く見られることから。ポリープと子宮内膜癌の関係を明らかにするために、タモキシフェン投与中または投与後に子宮内膜癌が発症し子宮全摘術を受けた症例について、その背景病変を検討した。子宮内膜癌の背景として子宮内膜ポリープを7例中6例に認め、ポリープがタモキシフェンが関与する子宮内膜癌の組織発生に重要な役割をはたしていると考え、婦人科腫瘍学会での発表を予定している。これら収集された材料を基にC-JunとC-Fosを免疫組織学的に検討してみると、タモキシフェン投与下に子宮内膜増殖症を発症した例でC-JunとC-Fos発現を認めた。今後はさらに子宮内膜癌でも検討し、タモキシフェンがAP-1領域を介して発癌にどの様に関与しているのか解明したい。
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